Sakuyaの図書室

書物の御紹介

河童とはこんな生き物 entry 32

 第32回目の書物は文学( entry 25の続き )です。

 

【 河童 】🍀

 著 者/芥川 龍之介氏

 

 僕はこの先を話す前にちょっと河童というものを説明しておかなければなりません。河童は未だに実在するかどうかも疑問になっている動物です。が、それは僕自身が彼らの間に住んでいた以上、少しも疑う余地はないはずです。ではまたどういう動物かと言えば、頭に短い毛のあるのは勿論( もちろん )、手足に水掻きのついていることも《 水虎考略(すいここうりゃく/  》などに出ているのと著しい違いはありません。身長もざっと一メエトルを越えるか越えぬくらいでしょう。体重は医者のチャックによれば、ニ十 ポンド( 質量 / から三十ポンドまで、ーー 稀には五十何ポンドぐらいの大河童 おおがっぱ もいると言っていました。それから頭のまん中には楕円形 だえんけい の皿があり、そのまた皿は年齢により、だんだん固さを加えるようです。現に年をとったバッグの皿は若いチャックの皿などとは全然手ざわりも違うのです。

 

1.水虎考略( すいここうりゃく )/水虎とは河童のことで、川太郎.河伯など多くの異称があります。この本は、日本や中国の記録や文献から河童の情報を引き集めた江戸時代の《 河童研究書 です。相撲を好み、人語を解し、頭上が皿のように凹み へこみ 、水かきや亀のような甲羅があり、肌が鯰( なまず のように滑る・・・といったおなじみの河童の特徴が報告されています。この《 水虎考略 》の原本を著したのは、昌平坂学問所儒者の古賀とう庵 こがとうあん/一七八八~一八四七 です。

     ーーー 西尾市岩瀬文庫より ーーー

 

2.ポンド( 質量 )/ポンド( オランダ語:pond )またはパウンド( 英語:pound )は、ヤード・ポンド法などにおける質量の単位である。

     ーーー Wikipediaより ーーー

 

 しかし一番不思議なのは河童の皮膚の色のことでしょう。河童は我々人間のように一定の皮膚の色を持っていません。何でもその周囲の色と同じ色に変わってしまう、ーー たとえば草の中にいる時には草のように緑色に変わり、岩の上にいる時には岩のように灰色に変わるのです。これは勿論河童に限らず、カメレオンにもあることです。あるいは河童は皮膚組織の上に何かカメレオンに近いところを持っているのかもしれません。僕はこの事実を発見した時、西国 さいごく の河童は緑色であり、東北の河童は赤いという民俗学上の記録を思い出しました。のみならずバッグを追いかける時、突然どこへ行ったのか、見えなくなったことを思い出しました。しかも河童は皮膚の下によほど厚い脂肪を持っているとみえ、この地下の国の温度は比較的低いのにも関わらず、 平均 華氏( かし/  五十度前後です 着物というものを知らずにいるのです。勿論どの河童も目金をかけたり、巻煙草の箱を携えたり たずさえたり 、金入れを持ったりはしているでしょう。

 

3.華氏( かし /英語:degree Fahrenheit/記号:°F )/数種ある温度のうちのひとつであり、ケルビンの1.8分の1である。真水の凝固点を32カ氏温度、沸騰点を212カ氏温度とし、その間を180等分して1カ氏度としたことに由来する。ドイツの物理学者ガブリエル・ファーレンハイトが一七ニ四年に提唱した。

     ーーー Wikipediaより ーーー

 

 しかし河童はカンガルウのように腹に袋を持っていますから、それらのものをしまう時にも格別不便はしないのです。ただ僕におかしかったのは腰のまわりさえおおわないことです。僕はある時この習慣をなぜかとバッグに尋ねてみました。するとバッグはのけぞったまま、いつまでもげらげら笑っていました。おまけに「 わたしはお前さんの隠しているのがおかしい と返事をしました。

 

 

 

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 医者のチャックの方が年上だと思っていたのですが、違ったようです。それと、河童のお腹に袋が付いているとは思いもしませんでした。面白いですね。

  Sakuya☯️

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芥川 龍之介氏( 一八九ニ~一九ニ七 )

東京生まれ。

東京帝国大学英文科卒業。早くから文学的才能を示し、《 鼻/一九一六 》漱石氏に認められ、文壇生活の出発となる。歴史に材をとった多くの短編は、端麗文体と人間性の深い洞察により、多くの読者の支持を得ている。

     ーーー 株式会社 集英社 ーーー

 

 

 

 

河童

 発 行/1992年9月25日 第1刷

    /2008年6月7日  第14刷

 発行所/株式会社 集英社