Sakuyaの図書室

書物の御紹介

優雅で気品あふれる湿原の守り神 entry21

 第21回目はデータファイルの御紹介です。


すばらしき野生の王国🍀
 企 画/インターナショナルマスターズ
     パブリッシャーズ


タンチョウ
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 白と黒の羽色が美しく、翼を広げると差し渡し2.5㍍にもなる。日本では昔から《 長寿の象徴 》《 めでたい鳥 》として尊ばれてきたタンチョウは、アジア極東地域の北部に住んでいる。ツルの仲間のうちでも大型の鳥であり、インドから東南アジアで暮らすオオヅルに次いで2番目に大きい。オスとメスが大きな声で鳴き交わしながら互いに向き合って翼を広げ、まるで踊るように求愛ディスプレーをする姿は有名。日本では北海道を代表する鳥としても知られ、かつてアイヌの人たちはこの鳥を《 サルルン・カムイ/湿原の神 》と呼んで大事にしていた。

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🌱 夏は核家族、冬は集団生活
 繁殖期である夏場には、つがいのタンチョウは湿原などに2~7キロヘイホウメートルの広いなわばりをもち、そこで子育てをする。なわばりを守るのはおもにオスの役目である。ヒナを抱いて温めたり世話をしたりするのはメスが多い。夜になると湿原にヨシなどを敷いてつくった簡単な巣で、ヒナを守りながら寝る。


🌱 一生の間連れ添う夫婦
 タンチョウは一度つがいになると、一生を共にすると考えられている。毎年3月~4月ごろ、つがいのタンチョウは川や湿原のヨシ原で、枯れ枝やヨシの茎をくちばしで切って積み重ね、直径2㍍ほどの巣をつくる。メスとオスは交代で卵を温める。卵の数は2個がふつうだが、ヒナが生まれても順調に育つのはせいぜい1羽しかいない。1か月余りで生まれてくるヒナは、黄色がかった茶褐色で、全身が薄茶色の産毛でおおわれている。ヒナは、生まれた直後から目が見えており、半日もすると歩きだす。その後、3日~7日ほどで親と共に巣を離れ、エサが多く安全な場所に移動する。
 生まれて100日ほどで飛べるようになり、通常、遅くとも翌年の3月には親から追い払われてひとり立ちする。

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ヒナが小さいうちは、親がくちばし移しで食べ物を与える。


🌱 雑食性のタンチョウ
 タンチョウは、実にさまざまなものを食べる。住む場所や季節によっても異なるが、植物の根や葉・種子・果実を始め、小魚・タニシ・ザリガニ・昆虫・両生類・ネズミ・他の鳥のヒナなどもエサにする。子育ての時期には動物性のエサを獲ることが多い。エサを獲る時は、ゆっくりと歩きながら地上の食べ物をついばむか、川や湖の浅瀬に入り、小魚などをくちばしで突き刺す。また、雪の積もる冬には人里のそばに来て、人間が与えるトウモロコシや海水魚、オキアミなども口にする。ヒナが生まれて1か月ほどのあいだは、親鳥がエサをくちばし移しで与える。魚など大きな獲物であれば、親がくちばしでつついて細かくしてからヒナに食べさせる。

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タンチョウは、種子や草の根・葉といった植物性のエサのほか、川に棲むカエルやザリガニ・魚といったような動物性のエサも食べる。


🌱 本州から姿 を消したタンチョウ
 かつてタンチョウは、関東以北の幅広い地域で数多く見られた鳥である。しかし、子育てのための湿原が開拓によって減ってしまい、乱獲も各地でおこなわれた。明治時代の末には北海道のタンチョウが絶滅したと考えられていたものの、大正13年( 1924年 )に釧路湿原で10数羽の生き残りが見つかり、タンチョウを保護するための運動が始まった。昭和27年( 1935年 )に国の特別天然記念物に指定され、いまでは北海道の東部に約900羽のタンチョウが暮らしているといわれている。

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首と足とをまっすぐにして飛ぶタンチョウの姿には、品格さえ漂う。手厚い保護によって絶滅の危機は脱したものの、湿原の減少や水質汚染など、タンチョウにとっての受難は続いている。


🌱 タンチョウ(Japanese Crane)
 分 類 /ツル目
 科 名 /ツル科
 属 名 /クロヅル属
 学 名 /Grus japonensis

タンチョウは、中国北東部やモンゴル東部・ロシアのアムール川流域でヒナを育て、朝鮮半島などで越冬する。日本では、おもに北海道東部に1年を通じて住んでいる。

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 生息域 /広い低層湿原・湿地
     /冬でも凍らない浅い河川
     /川・沼・湖・海岸に隣接する、
      平地・原野
 生息状況/絶滅危惧種
 行動単位/小群。繁殖期はつがい
 体 長 /130㎝~150㎝
 翼 幅 /220㎝~250㎝
 体 重 /7㎏~12㎏
 渡り性 /季節移動。日本国内のものは、
      ほとんど渡りをしない
 羽   /雄雌同色
 性成熟年数/約4年
 繁殖時期/3月~10月
 抱卵期間/約32日
 1回の産卵数/2個
 主な食べ物/植物の根や葉・種子・昆虫・
       ザリガニ・カニ・ミミズ・小魚・
       ネズミ・小鳥のヒナなど
 寿 命 /推定20年~25年。
      飼育下で35年~40年


🌱 くっきりした羽と頭の色
 タンチョウという名前は、頭のてっぺんが赤いことから付けられている。首と脚が長く、水辺でエサを獲るのに適した体となっている。短い距離であれば、しっかりした脚で歩くことも多いが、翼の力が強いため長い距離を飛ぶこともできる。

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・頭のてっぺんが赤い。この部分には羽毛がなく、ニワトリのトサカのように血管が透けて見える。興奮すると赤い色が濃くなり、後ろへ広がる。


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・暗緑色の長いくちばしは鋭く、小さな種子でも拾えるほど器用だ。しかし、根元の部分は意外に弱く、折れたり曲がったりすることもある。

・長い気管が胸骨の中でうずを巻いており、響きのよい大きな声で鳴くことができる。

・次列風切羽( 16枚 )と三列風切羽( 6枚 )が黒い。翼をたたむと、この部分が白い尾の上にかぶさるので、尾が黒いように見える。

・黒っぽい灰色の力強い脚を使って全速力で助走し、飛び立つことができる。飛ぶときは脚を後ろへ伸ばし、長い首とのバランスを取る。また、なわばりやヒナを守るときには、脚で蹴って攻撃する。


🌱 タンチョウの仲間たち
 タンチョウと同じクロヅル属には10種あり、ツル科の鳥のうちで最も種類が多い。日本では、タンチョウ以外にもマナヅル( whiteーnaped crane )やナベヅル( hooded crane )が毎年のように見られる。ツル科にはクロヅル属のほかに、のどに肉垂れのあるホオカザリヅル属や、ヒマラヤ山脈さえ越えて渡りをするアネハヅル属、後頭部に黄金色の冠羽をもつカンムリヅル属がいる。

マナヅル
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🌱 神話?それとも実話
 北海道に住むアイヌ民族の人びとは、タンチョウのことを《 サルルン・カムイ/湿原の神 》と呼んだ。タンチョウが正義の化身であり、悪を追い払ってくれるものとして大切にしていたのである。
 本州でも、タンチョウは高貴でめでたい鳥ということで珍重され、《 鶴の一声 》《 鶴の千年 》などの言葉が残っている。たしかにタンチョウはよく響く声で鳴くが、本当に1000年も生きるのだろうか? 記録では、釧路市丹頂自然公園で36年6か月生きた例がある。




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