Sakuyaの図書室

書物の御紹介

美しきトロイアの城壁 entry 50

第50回目は神話に関する書物の御紹介です。

 

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ギリシア神話物語

     トロイアの歌 】🍀

 著 者/コリーン・マクロウ氏

      Colleen McCullough )

 訳 者/高瀬 素子( たかせもとこ )

 

 

 語り手 プリアモス

 

 いまだかつてトロイアのような都市はかった。

 トロイアの偉大な城壁は神々の手で建てられたものだった。

 

 トロイアの城壁がいつ建てられたのか、だれも覚えてはいない。それほど大昔のことだったが、その逸話なら、だれでも知っている。

 その昔、ダルダノス( 天界を統べる大神ゼウス ❲ 1 ❳ の息子 )は、小アジア( 2 )の突端にある四角い半島を手に入れた。その半島の北側では、黒海がヘレスポントスという狭い海峡を通ってアイガイア海へと流れこんでいる。ダルダノスはこの新しい領土を二つに分割して、南側の地域のほうを次男に与えた。次男はその地をダルダニアと名づけ、リュルネッソスという町を都と定めた。ダルダノスの死後、長男に受け継がれた北側の地域は、ダルダニアより狭いとはいえ、はるかに豊かだ。ヘレスポントス海峡の管理者として、黒海とのあいだを行き来するすべての交易船に通行税を課す権利をもっているからだ。この地域はトロアスと呼ばれている。その都トロイアは、トロイアという丘の上に建つ。

 ゼウスはこの人間の息子を愛していたので、ダルダノスがトロイアに難攻不落の城壁を授けてほしいと祈願すると、喜んで息子の願いをかなえてやることにした。その当時、ゼウスの不興をかっていた神が二人いた。海の神ポセイドン( 3 )と光の神アポロン( 4 )だ。二人はトロイアへ出向いて、どこよりも高く、ぶ厚く、強固な城壁を築くようにと命じられた。典雅( 5 )で気難しいアポロンにすれば、こんな骨折り仕事は冗談ではなく、彼は汗水たらして働くかわりに竪琴を弾くことにしたーーー城壁を築くあいだのいい気晴らしになる、アポロンは抜け目なく、お人よしのポセイドンにはそう説明した。ポセイドンがひとつずつ石を積み上げるかたわらで、アポロンはセレナーデを奏でた。

 ポセイドンは力仕事の代償として、毎年リュネッソスにある自分の神殿に百タラントの黄金を納めるよう求めた。ダルダノス王は承諾した。したがって、大昔には、リュルネッソスのポセイドンの神殿には、毎年百タラントの黄金が奉納されていた。ところが、わが父ラオメドンがトロイアの王位を継いだころに、大地震がこの地を襲った。クレタ島( 6 )のミノス王の宮殿は倒壊し、テラ島( 7 )都市国家も壊滅したほどのすさまじさだった。トロイアの西の城壁も崩れ落ちたので、父はアイアコスというギリシア人を雇って、建て直させた。

 アイアコスの仕事はぶりはみごとだったが、彼が建てた新しい城壁には、残りの三方を囲む神の御業の城壁のようななめらかさも美しさもなかった。

 ポセイドンとの契約はアポロンも演奏料を請求するほど恥知らずではなかったらしい )無効になったと、父は言った。結局、城壁は難攻不落ではなかったわけで、毎年リュルネッソスのポセイドンの神殿に捧げていた百タラントの黄金は、今後いっさい納めるつもりはない、絶対に、と。父の言い分はいかにも正当な主張のように聞こえたが、神にははっきりわかっていたはずだ。当時はまだ子どもだった私でさえ、気づいたのだから。わが父ながら、ラオメドン王は救いがたい守銭奴( 8 )で、ライバル関係にある同族の王家が治める都市の神殿に、貴重なトロイアの黄金をそれほど多量に納めるのはどうにも我慢できなかったのだ、と。

 それはともかく、黄金は奉納されなくなり、やがて私は大人になって、さらに何年も過ぎたが、そのあいだ、何事も起こらなかった。

 ライオンが姿を現したときでさえ、その出現を神々に対する侮辱や城壁と結びつけて考える者はいなかった。

 

 

1.ゼウス/ギリシア神話の主神たる全知全能の存在で、全宇宙や天候を支配する天空神であり、人類と神々双方の秩序を守護・支配する神々の王です。全宇宙を破壊できるほど強力な雷を武器とし、多神教のなかにあっても唯一神的な性格を帯びるほどに絶対的で強大な力を持ちます。

  Wikipedia より~

 

2.小アジア( しょうあじあ )アナトリア半島とも言います。アジア大陸最西部で西アジアの一部をなす地域で、現在はトルコ共和国のアジア部分です。日本語ではアナトリア半島と呼ばれることが多いですが、英語圏では 半島 をつけず、単なるアナトリアであり、地形ではなく人文地理的な地域を表す言葉です。

  Wikipedia より~

 

3.ポセイドン/ギリシア神話の海神でクロノスとレアの息子です。兄弟のゼウスおよびハデスとともにティタンたちと戦って勝ったあと、くじ引きで世界を分け合い、支配領域として海を引き当てました。妃のネレウスの娘アンフィトリテとともに海底の宮殿に住んでいますが、オリュンポスにも住居をもち、アンフィトリテ以外にも多くの女神や人間の女と交わって子をもうけました。

  コトバンクより~

 

4.アポロンギリシア神話の神で、ゼウスとレト女神の子であり、アルテミスの双子の兄弟です。デロス島で生まれ、極北のヒュペルボレオイ人の国に行って、1年間そこにとどまったあとででデルフォイニ来て、大地女神ガイアの神託を守護していた悪竜ピュトンを退治し、神がかりした巫女ピュティアの口から述べられるその神託を自分のものにしました。絶世の美男子で、弓矢と竪琴をたずさえ、予言とともに音楽・医術・牧畜なども司り、また病の矢を放って人や家畜を殺す恐ろしい疫病神としての面もあります。のちに太陽神と混同されました。

  コトバンクより~

 

5.典雅(てんが)/上品で美しいさま。

 

クレタ島ギリシャ共和国南方の地球海に浮かぶ最大の島です。古代ミノア文明が栄えた土地で、クノッソス宮殿をはじめとする多くの遺跡があります。また、温暖な気候や自然景観から地中海の代表的な観光地でもあります。

  Wikipedia より~

 

7.テラ島/ ~アトランティス伝説より~  ヨーロッパ中世においてはこの島は実在したものと信じられ、以来アメリカ大陸・スカンジナビアカナリア諸島など、現実の大陸や島に比する試みがなされてきました。最近では、前15世紀の中ごろ、猛烈な火山の爆発によって、島に営まれていたミノス文明を火山灰の中に埋めつくし、島そのものの姿を一変させるとともに、誘発した地震と大津波とによってクレタ島にまで甚大な破壊的影響を与えたことが知られるエーゲ海のサントリニ島( 古名テラ島 )とこの伝説を結びつける考古学の説があります。

  コトバンクより~

 

8.守銭奴( しゅせんど )/金銭欲が強く、金をためることだけに熱心な人をにののしって言う語です。

 

 

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 ギリシア神話は日本神話よりも、神様方の感情の表現が、人間に近いような気がします。その部分を楽しく捉えれば( 生け贄を要求することではありませんが )、親しみやすい文学なのではないでしょうか。ギリシア神話を読んでから日本神話を読むと、神話の世界に入りやすいと思います。トロイアの城壁建造の際、海の神ポセイドンは力仕事をさせられましたが、ポセイドンと光の神アポロンとの関係は、持ちつ持たれつなのでしょう。

 神々が建造した美しきトロイアの城壁を、見ることが出来るといいですね。

 

 この章には英雄ヘラクレスが登場します。ヘラクレスの強さを目の当りにしたら、私は呆然としてしまうのではないだろうかと思います。

  Sakuya☯️

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著者紹介

コリーン・マクロウ氏

 Colleen McCullough )

作家。

1977年に発表された The Thorn Birds は全世界で翻訳され、三千万部のベストセラーとなった。

著作に “ The Masters of Rome ” シリーズの Caesar などがある。

 

訳者紹介

高瀬素子( たかせもとこ )氏

1960年生まれ。東京大学文学部英文科卒業。

おもな翻訳書にラッセル・ウォーレン・ハウマタ・ハリ、マーガレット・マロン『 密造人の娘 』『 甘美な毒 』( 以上、早川書房 )、ステファン・レクトシャッフェン『 タイムシフティング 』NHK出版 )などがある。

 

 

ギリシア神話物語 トロイアの歌

発 行/2000年4月25日 第一刷

発行所/日本放送出版協会

©️ 2000 Motoko Takase